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対談内容



中川雅仁の巻頭対談いい人いい話いい氣づき
2005年9月の対談

中川 雅仁 池間 哲郎 さん
(なかがわ まさと)
1961年北海道生まれ。北海道大学工学部卒。(株)エス・エー・エス会長。全国各地で真氣光しんきこうと呼ばれる氣を通して意識改革に精力的に取り組んでいるほか、奈良県生駒市にて意識改革を目的にした合宿『真氣光研修講座』を開催し、好評を博している。著書に『こんな癒しがあった!』(文芸社)、新刊『氣で生きる力が湧いてくる』(ごま書房)などがある。
(いけま てつろう)
1954年沖縄生まれ。NGO沖縄アジアチャイルドサポート代表理事。主に、アジア(ベトナム、タイ、フィリピン、カンボジア、モンゴルなど)のゴミ捨て場やスラムなどの貧困地域へ足を運び、そこで見た貧しい人々の過酷な現状や今日を必死で生きる子どもたちの姿に心を動かされる。私たちの「少しだけやさしい心」で、いかに多くの人の命が救われるか、講演、写真、ビデオを通して伝えている。http://www.okinawa-acs.jp/
著書
「あなたの夢はなんですか?私の夢は大人になるまで生きることです」



■必死に生きる子どもたちの姿に涙が止まらなかった

中川 池間さんの『あなたの夢はなんですか? 私の夢は大人になるまで生きることです』という本を読ませていただきましたが、最後の方は涙が出て止まりませんでした。本当に大変な思いをしている子どもたちがいるんだなあと、心にずきんときましたね。
 この本も池間さんの活動も、多くの人に知っていただきたいと思って、ぜひ対談をとお願いした次第です。いろいろとお話を聞かせてください。

池間 ありがとうございます。
 私は氣のことに関しては素人ですが、氣は間違いなく存在していると思っています。人間は、生きている以上、氣を発するし、氣を受けているはずです。やさしさというのは氣なんじゃないかと思いますね。
 今日は、氣のことをいろいろお聞きできると思って、私も楽しみにしています。

中川 そう言っていただけると光栄です。
 私は、心や魂から氣が出ていると考えています。自分が楽しくなれば相手も楽しくなるし、相手が楽しくなれば自分も楽しくなります。これは、氣の影響だと思います。氣は持ちつ持たれつ、与えるばかりでなくもらうこともあって、氣の交流が起こり、お互いに成長していけますね。
 ところで、池間さんはもともとビデオ制作の会社の社長さんだそうですが、何がきっかけで海外の子どもたちを撮るようになったのでしょうか?

池間 話せば長くなるのですが(笑)、私自身のおいたちとも関係があるんですね。
 私は沖縄の生まれですが、沖縄の人たちは、本土の人たちにはわからないような体験をしています。貧困があって、戦争では局地戦があり、目の前で家族や友人が殺されていくのを見ています。
 そして、何よりも差別がありましたから。アメリカ人からの差別を体で感じていました。
 そんなこともあって、差別に対する疑問とか憤りというのは、人並み以上にありました。発展途上国と呼ばれている国々には今も差別があります。そうした国々の差別に対する問題意識は持っていました。
 それが大きく膨らんだのは、台湾へ行ったときのことです。売春問題を取材することがあったのですが、そのときに、売春婦の中に10歳にもならない子どもがいるのを知って、これは大変なショックでしたね。
 いろいろと調べていくと、彼女たちは山岳民族だとわかりました。差別されている人たちだったのです。それを知って、かつての自分たちの姿とダブりましたね。
 でも、そのときは、ここまでのめりこむとは思ってもいませんでしたが(笑)。

中川 人生というのは、何がきっかけになって大きな変化が起こるかわかりませんね。
 池間さんが、今の活動をやっていくことを決断した決定的なことって何だったのか、すごく興味ありますね。

池間 私のおやじは警察官なんですが、私はおやじに2回捕まるほど、若いころは無茶をやっていました。へたに空手をやっていたものだから、いつも血だらけ。
 暴れるばかりで、何をするにもいつも中途半端で、人生を大切にしてなかった。
 そんなときに、フィリピンのゴミ捨て場へ行ったわけです。そしたら、3歳、4歳の子どもたちが朝から晩までゴミを拾っていた。もともと映像屋だから、その姿が目に焼きついてしまった。ツメがはがれているとか膿が出ているとか。血だらけ、傷だらけ…。
 ふと、こんな小さな子どもがここまでして必死に生きているのかと、胸がいっぱいになってきました。ゴミの中で泣いていましたね。
 自分が恥ずかしくなった。一生懸命に生きないと、この子たちに失礼だ。大切なのは真剣に生きることだと気づいた。
 そう思ったら、その子たちの命がとても大切になってきた。自分が生きると決めたとたん、その子たちの命が大切に見えてきたんですね。

中川 そこで出会った少女に、『あなたの夢は何ですか?』って聞いたら、『私の夢は大人になるまで生きることです』っていう答えが返ってきたと本には書かれていましたね。
  世界中で、一日で4万人くらいの人が、貧しさのために亡くなっているそうですね。それもほとんど子どもでしょ。
 大人になるまで生きるっていうのは、当然のことのように思ってしまうけど、ゴミの山で暮らしている子どもたちにとっては、大人になることが夢なんですね。
 日本で暮らしていると想像もできないすさまじい世界ですよね。

■生きる力がもっとも弱いのは日本の子どもたち

池間 最初は、だれかに子どもたちの話をするつもりはまったくなかったんです。
 映像も、見せるために撮ってきたわけではありませんでした。
 でも、その映像や私の体験によって、子どもたちが自らを感じることができると気づいたんですね。
 今、あちこちで講演していますが、講演時間は90分くらい。映像を使って主観をなるべくいれずに客観的に淡々と語ることにしています。
 この子は、何歳で死んだ。この子は、エイズになったと伝えるだけです。
 あとは自分で考えてほしいんですね。
 本当に自分たちが恵まれているということが、高学年になるとわかります。
 そして、もっとも大切なボランティアは、人を助けることではなく、まず自分自身がしっかり一生懸命に生きることだって、気づいてくれます。私が、ゴミの山の中で声を上げて泣いたときのようにね。
 今は、子どもたちの中に、なかなか感じる心が育ちません。人の痛みをわかるとか悲しみが伝わってくるとか、そんな感性が育っていかない環境の中で日本の子どもたちは育っています。

中川 どうしても、ゴミの山で暮らしたり、売られていく子どもたちの話を聞くと、『かわいそうに』という気持ちが先行してしまいがちです。でも、お話をうかがっていると、池間さんは、必ずしも、かわいそうな子どもたちを援助するという姿勢で、今の活動をしているのではないようですね。

池間 そうです。私のやっている活動は、途上国を相手にしているので、外国の子どもの支援をしているように見られがちですが、本当は国際貢献を通した日本の子どもの健全育成を目的としています。
 今の子どもたちは、我々の世代の子どものころとは違います。物質的には豊かになっているけど、生きる力という面で言えば、世界で一番弱いのは日本の子どもであると断言できます。
 なぜ生きる力が弱くなったか。
 それは感謝がなくなったからですよ。食べ物も豊富になって、物が豊かであることはすばらしいことです。もう一度、昔みたいに貧しい生活をしろということではありません。大切なのは、豊かになったことに感謝ができるかどうかです。
 今の子どもには悲しいくらい感謝がない。食べ物が大切だと思っていない。

中川 私どもは、奈良県の生駒山で5日間の研修講座を開催しているのですが、自分の過去を振り返ってみると、親からいろいろなことをしてもらっていることに気づく人がたくさんいます。親に対して、何もしてくれなかった、やりたいことをやらせてくれなかったと、不平不満ばかり持っていた人が、親に感謝できるようになると、がらりと変わってしまいます。
  病気だった人も、感謝の気持ちを持つと元気が出てくる。
 感謝が生み出すエネルギーというのはすごいですよ。

池間 よくわかります。そもそも、親が子どものことをするのが当たり前だと思われるようになったのが間違いです。
 途上国では、子どもが親のことをするのが当たり前です。親への感謝があるから、親のために働いたり、売られていったりできるわけです。
 日本の子どもたちは、親が苦労して大学へ行かせても、当たり前だと思っています。
 感謝がないことは生きる力がなくなったことだと、私は思っています。

中川 そうですね。途上国のひどい環境にいる子どもたちを助けるということばかりではなく、彼らからいろいろなことを教えてもらっているということでしょうね。

池間 お互い様なんですよ。向こうから見れば、日本にはお金や物がたくさんある。だから、私たちは、みんなが少しずつ出し合って、彼らがよりいい環境で生活できるように援助する。そして、彼らが必死で生きる姿を見ることで、日本人は生きる力をもらうことができるのです。

■私たち日本人がなくしてしまったものを取り戻すチャンス

中川 恵んであげているという感覚での援助というのはいびつですよね。一方通行ではなくて、私たちもたくさんのことを得ているという気持ちがあれば、とてもすてきな関係が築けそうですね。

池間 国際協力というと、大きな団体を通さないとできないという思い込みがあります。大人になっても、大きな団体に寄付するのが一番だと思っています。
 でも、それでは地域による国際協力は生れません。他人事になってしまいます。
 みんなで協力しながら、国際貢献をしていこうという運動が地域で起これば、子どもたちは、もっと身近に貧しい国のこと、自分たちが何をすればいいのかといったことを学べるはずです。
 いつも恵まれない国のかわいそうな子どもたちを助けようとか、ちびたえんぴつを送ろうとか、そんな活動ばかりしているのが、今の国際貢献の現状です。
 相手が貧乏人だとバカにしているとしか思えないわけで、国際的にも批難が起こったりしています。
 中には、新品のえんぴつを折ってもってくる子どもがいるんですよ。自分たちが捨てるものを彼らはありがたいと思うんだと、そう思い込んでいる。
 そんな国際貢献では、自分たちは上なんだという意識を植え付けるだけではないでしょうかね。

中川 さきほど言われた親への感謝の気持ちもそうですが、物が豊富になってしまったことで失ったことがたくさんあるわけですね。国際貢献もやり方によっては、私たち日本人がなくしたものを取り戻すことができるということでしょうね。

池間 それはもうたくさんたくさんありますよ。モンゴルやフィリピンの子どもたちは、貧しいけれども、人間性はすばらしいことを知ってもらいたいんですね。

中川 モンゴルには、マンホールで生活している子どもがいるそうですね。

池間 そうです。親のいない子どもたちです。もちろん、住む家もありません。冬はものすごい寒さですから、外では凍えて死んでしまいます。マンホールの中は、真っ暗でネズミたちの住み家ですが、発電所から各家庭に配られる暖房用のお湯のパイプが通っているので真冬でも10℃くらいあるんです。だから、寒さをしのぐために親のいない子どもたちが暮らしています。
 その子どもたちを保護する施設をモンゴルに作りました。毎年、施設で暮らす子どもたちを日本にホームステイさせますが、最近は、子どもを預かりたいという家庭が増えてきてお断りしている状態です。
 モンゴルの子どもたちをホームステイさせた家庭は、自分の子どもたちに対する教育効果が出ると、とても喜んでくれるんですね。

中川 そうですか。どんなことが起こっているんだろう。子どもたちも、なかなか親の言うことだと聞きませんからね。まったく違った環境で生きてきた子どもたちの姿を見ていろいろ感じるんでしょうね。

池間 たとえば、夕食のときですが、モンゴルの子にとって、親がごはんをいれて、味噌汁を出すことは信じられないわけです。
 その上、ごはんを食べたら、片付けもせずにテレビを見ているんですから、彼らは怒り出しますね。なぜ、子どもがこんなことしているの、お父さんもお母さんも疲れているのに、どうしてさせるの、って真剣な顔で言うわけです。食事の準備や片付けは子どもたちがやることなんだって、彼らは一歩も引きません。
 その迫力に圧倒されて、日本の子どもたちも、翌日からは、お母さんに片づけをさせないようになります。
 そういうのを見ると、親にはできない教育があると痛感します。子どもたちに気づきが出てくるんですね。

■出会った子どもたちの気持ちを大切にして真剣に伝える

中川 すばらしい話ですね。必死で生きてきた子どもたちの言葉だけに重みを感じます。日本の子どもたちが圧倒されている姿が目に浮かびます。これこそ、生きた教育ですね。

池間 彼らの一言一言は、本当に重い。8歳から16歳の子どもが8名、沖縄にやってきたときもすごいことを残していってくれました。完全孤児の子どもたちですよ。
 9歳の女の子が、沖縄の兄弟たちに伝えたいって言い残していった言葉は忘れられません。『これは自分が一番大切にしたいことです。どうか、親が元気なうちに、大事にするんだよ』というんですよ。はー?とか思いますよ。
 もう一人、13歳の男の子。彼は、気がついたら孤児になっていて、駅やマンホールに住んでいた。親をまったく知らない。
 暴力で顔はナイフで切り刻まれている。それを生き延びてきた。
 彼は、こんな言葉を残していきました。『親があることは当然ではないんだよ。自分は、親がだれだかわからないし、本当に人間であるかどうかわからなかった。沖縄でホームステイのお父さん、お母さんに出会ってから、自分が人間であることがわかった。』
 子どもの使う言葉じゃないですよ。
 彼らの姿を見て、言葉を聞いて、沖縄の子どもたちも、親が大切なものだと気づきます。兄弟以上に親しくなる。沖縄の子どもたちは、モンゴルの兄弟たちと写真を撮って常に机に置いておく。そうすると気づきを忘れない。彼らから受けた強烈な思いや感動をずっと持ち続けることができるのです。

中川 でも、そうしたすばらしい交流が起こるのも、池間さんが本気になって、覚悟を決めて、子どもたちと接しているからだと思います。池間さんの氣が、モンゴルやフィリピンの子どもたちと日本の子どもたちの橋渡し役を務めているのではないでしょうか。

池間 この活動をはじめて16年になります。こんなにやるとは思わなかったというのが正直な気持ちです。
 この16年、出会った子どもたちを大切にする気持ちだけは忘れないようにしてきました。
 だから、モンゴルの子どもたちと一緒にマンホールにも入ってみました。ゴミの中で寝たこともあります。
 ゴミの中で暮らさないと、彼らの痛みはわからないですよ。
 一緒のものを食べるのも大切で、すさまじい残飯を食べたこともあります。そうすると、土地の人も信頼してくれます。
 その人たちと寝ることで、一緒の人間であるということが私の中でも整理ができるんです。ハンセン病で、目も鼻もくさって、足もない人と寝るのは大変ですよ。
 私の中にも、臭いとか汚いとか、もしかしたらうつるかもしれないという気持ちはあります。それがちょっとだけそれではいけないという気持ちが強いだけ。一緒に寝ると、やっていけると自信がついてくる。そこに住む人たちも、こんな外国人はじめてだと信頼してくれる。

中川 そして、その体験を日本で伝えておられるわけですが、命をかけた本気の活動だから、子どもたちも真剣に聞くでしょうね。

池間 小中高、大学、一般とやりますが、学校での講演が一番多いですね。荒れた学校がよく呼んでくれます。
 最初にも言いましたが、私が講演をやるときには、貧しい国のかわいそうな子を見せて募金すると思っているけど、違うってはっきりと言います。マンホールやゴミ捨て場で暮らしている子どもから生きることを教えてもらうんだと最初に釘を刺しておきます。
 今は、必死で生きている大人はいないし、必死で生きることが大切だということを言う大人もいません。
 それだけに、小さな子どもが必死に生きて死んでいった、売られていったという現実を見ることは、相当な衝撃になると思います。淡々と説明すると、日本の子どもたちも、自分を真剣に見つめるようになります。食べ物を大切にすること、お父さんお母さんがいることは当たり前ではない、学校に行くことは当然ではない。そんなことを自分たちで考えるようになるんですね。
 でも、なかなか話を聞こうとしない子どももいます。私は絶対に妥協しません。高校生と取っ組み合うことがありますよ。黙るか出て行くまで闘います。
 映像の中には死んだ子どもも出てきます。私が妥協するということは、死んでいった子どもに失礼です。必死になって今を生きている子どもに失礼です。だから、とことんぶつかっていきます。

中川 池間さんの迫力満点の氣を感じますね。氣は心と言いますが、氣によって人の心も動き、感動が生れます。
  日本では、餓死する人はほとんどいませんが、自殺者は世界一多いと言われています。これでは本当のしあわせな国とは言えないと思います。
 池間さんの伝えられていることは、病んだ日本にとって、本当に必要なことだと思います。こういう話は、子どもだけでなく、大人も聞くべきだと思いますね。

池間 不思議なことに、最近は企業研修に呼ばれたりします。大人も、ああいうふうに、生きるか死ぬかぎりぎりのところで必死に生きている子どもたちの姿を見ると、自分は一生懸命に生きているのだろうかという自問自答が始まるみたいです。
 私のような者の話を大切にしてくれる企業があるということは、口はばったい言い方になりますが、日本も捨てたものではないと希望が持てる気もします。

中川 その通りだと思いますよ。企業が利益を出すことは大切ですが、それ以前に、社員の人たちが、自分を見つめ、家族を大切にし、さらには社会貢献をしていくという方向に動くことで、世の中は大きく変化していくと思います。今日は、お忙しい中、本当にありがとうございました。
(2005年7月5日 SAS東京本社にて 構成◎小原田泰久)



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