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対談内容



中川雅仁の巻頭対談いい人いい話いい氣づき
2006年07月の対談

中川 雅仁 星川 淳 さん
(なかがわ まさと)
1961年北海道生まれ。北海道大学工学部卒。(株)エス・エー・エス会長。全国各地で真氣光(しんきこう)と呼ばれる氣を通して意識改革に精力的に取り組んでいるほか、奈良県生駒市にて意識改革を目的にした合宿『真氣光研修講座』を開催し、好評を博している。著書に『こんな癒しがあった!』(文芸社)、新刊『氣で生きる力が湧いてくる』(ごま書房)などがある。
(ほしかわ じゅん)
1952年東京生まれ。作家・翻訳家。九州芸術工科大学、米国ワールドカレッジ・ ウェスト大学中退。インド、アメリカ滞在後、1982年より屋久島在住。“半農半 著”のかたわら、環境問題にも積極的に関与。98年から8年間、屋久町環境審議 会会長。著訳書のテーマは精神世界、環境思想、先住民文化、平和など多岐にわ たる。著書に『魂の民主主義』、『屋久島水讃歌』、『地球生活』、共著に坂本龍一 監修『非戦』、訳書『暴走する文明』、『アメリカ建国とイロコイ民主制』、『一万 年の旅路』など60冊以上。04年、TUP(平和をめざす翻訳者たち)監修『世界は 変えられる』(七つ森書館)に対し日本ジャーナリスト会議より市民メディア賞 受賞。05年12月よりグリーンピース・ジャパン事務局長



■前回の対談は9年前、映画『地球交響曲』との繋がり

星川 お久し振りです。

中川 以前、お話をうかがったのはいつかなと思いましたら、97年なんですよ。97年の12月号で対談させていただきました。

星川 9年も経ちますか。早いですね。

中川 そのときの記事のタイトルは、「我々は先祖の大きな祈りの渦の中にいます」でしたが、インディアンの方たちは、重要なことは7代後の子孫のことを考えて決めるとか、5万年くらいの幅の視野が必要だ、などのお話をうかがい感銘を覚えました。
 また、龍村仁監督が『地球交響曲 第3番』を撮ろうと着手したときに、星川さんのご著書に出合ったことなどもうかがい、ご縁を感じました。

星川 そうですね。あの『精霊の橋』は『ベーリンジアの記憶』と改題し文庫本になりましたが、残念ながら今は絶版です。あのとき、監督にハワイ先住民族のナイノア・トンプソンをご紹介し、彼、『地球交響曲 第3番』に登場しているでしょう。いろいろ繋がって広がっていきました。

中川 星川さんは、『星の航海師―ナイノア・トンプソンの肖像』という本もお書きになっていますね。彼は、タヒチからハワイまでかつて祖先たちが渡ってきた外洋双胴カヌーの航海を今に蘇らせた方ですね。

星川 ハワイやポリネシアの人々が、自分たちの伝統文化に自信をもち、活性化させていく中で、ナイノアがもう一度道を開いた星や波など自然情報だけを使う長距離航海はその象徴となっているんです。監督も第3番を、「私たちの心の奥に眠っている5000年以上前の記憶を呼び覚まし、地球の心、命の不思議に遠く思いを馳せる "魂のロードムービー"」とおっしゃっていました。

中川 今回は、星川さんが「グリーンピース・ジャパン」の事務局長になられたとうかがい、そのお話もお聞きしたいと思いまして。

星川 まだ去年の12月に就任したばかりなので、十分なお話が出来るかどうか(微笑)。

中川 それまでは、ずっと屋久島にお住まいで、 "半農半著"の生活を送っておられたのですね。今は東京ですか。

星川 20年あまり自然の中の屋久島に住んでいましたから大都会の環境に馴染めず、海に近い湘南に家を借りましたが、事務所がある新宿までの通勤がまた大変で…(苦笑)。屋久島には年に2度、クリスマスから正月にかけてと、夏の休暇しか帰れそうにありません。屋久島の家は果樹園の中にあり、放っておくとあっという間に草に覆われてしまいます。27歳の息子が漁師をしながら最低限の管理はしてくれていますが、休暇で帰ったらまず掃除や草刈がひと仕事でしょう。

中川 そういう屋久島を出て、グリーンピースのお仕事を引き受けられたのはどうしてですか。

星川 グリーンピースの初期のメンバーである、カナダ人と日本人の若いカップルが日本で活動をしていらして、70年代半ばに知り合ったのです。私は個人として作家として環境と平和の問題を最大のテーマとしてきました。20代前半にインドのラジニーシの元で学び、その後アメリカに渡って、大学で応用生態学を学んだあと、山の中で電気も水道もガスもない生活を送りました。
  そこで感じたのは、人類は自然を支配し、開発し、搾取する技術を追求してきたけれど、あまりの行き過ぎに、現代は人間自身を含めた地球全体が変調をきたしているということでした。そこで、生態系との調和の取れた技術のあり方、文明のあり方を問い直すライフスタイルを身につけたいと思ったのです。アメリカから帰国後に、自然と身近に接する暮らしを続けたいと、屋久島へ移り住みました。
 そんなわけでグリーンピースの活動には早くから賛同し、1989年にグリーンピース・ジャパンが出来た当初からサポーター会員となって陰ながら応援してきました。また、屋久島の原生林保護や、隣接する種子島の使用済み核燃料中間貯蔵施設の立地阻止などに際しては、他のNGOと並んでグリーンピース・ジャパンからも有形無形の支援を受けました。

■今こそ一歩を踏み出さないと禍根を残すと判断

星川 去年の夏、グリーンピース・ジャパンの事務局長にという打診を受けたとき、他の人を推薦はしましたが、私自身は屋久島を離れる気がなかったので、お断りしていました。
 でも、9・11事件後のブッシュ政権の対応がおかしい、さらに去年9月11日の衆議院選挙に向かっていく異様な雰囲気を危ないと感じ、今一歩を踏み出さないといけないと思ったのです。9・11事件直後には、坂本龍一さんたちと『非戦』と題した本も共著で出しましたが、昨年の9・11選挙を前に、屋久島という遠隔地から書くことを通して社会に働きかけるこれまでのスタイルを崩しても、社会の最前線で決定に近いところに居たいという思いに至りました。おかしな方向へ回り始めた時代の歯車が勢いをつけすぎて手遅れになる前に軌道修正する力の一端を担い、今出来ることをやらないと禍根を残すと判断したのです。

中川 グリーンピースとは長いお付き合いがあったのですね。緑豊かな "グリーン"と平和"ピース"ということで、方向性も共通していて。

星川 ええ、半年ほど事務局長を務めてみて、意外とはまり役かな、という気もしてきました(微笑)。ただ、それまで長年、まったく独りでやってきましたので、小さいとはいっても国際組織の日本支部をマネジメントする仕事ができるか、半信半疑のところはありました。

中川 生活が丸ごと変わってしまいますから、大決心でしたね。ところで、山と渓谷社出版のこの本、『グリーンピース ストーリー』をちょっと読んでみましたら、既に世界中では300万人も会員がいるということで驚きました。

星川 淳 さん星川 世界41カ国で活動しています。1971年に、カナダの学生やジャーナリストたち12名が、アメリカがアリューシャン列島のアムチトカ島で行う核実験を阻止するためにオンボロの船で直接行動を起こしたのがスタートです。今では、人口8000万人のドイツは55万人、1500万人のオランダでは58万人ものメンバーがいて、グリーンピースの活動を支えています。
  それに対して日本支部は、現在5700人と桁違いに小規模です。日本ほどの国でしたら10万単位のメンバーがいていいんじゃないかと、世界からお尻を叩かれています。サポーターの年会費が6000円でちょっと高いのと、日本では「グリーンピース」というと捕鯨反対キャンペーンが有名で、過激な日本叩き専門の団体と誤解されたりするハンディを抱えてきたんですよ。
 でも、旧ソ連時代からロシアが日本海沖へ核廃棄物を捨てていたのが発覚して大問題になったのを覚えていますか。その実態を追い続けてきたグリーンピースが93年にその現場を映像で捉えて、ついに中止に追い込み、国際規制も強化することが出来ました。日本のためにも良い事をいろいろしているんですよ(微笑)。

中川 ロシアが日本海沖へ核廃棄物を捨てていた…そうでした、あれもグリーンピースの活躍があったんでしたね。小型船やボートで体を張っての反対という報道から、過激的なイメージが一般的にあるようです。

星川 現場での直接行動がグリーンピースの特徴でもありますが、徹底して非暴力ですし、研究・調査をしっかりやっていて包括的な活動をしています。そういうグリーンピースの本来の姿を日本の皆さんに知っていただくのも、私の役かな、と。新聞や雑誌などメディアの役割を重視してきましたので、ある程度の信頼は得ているのではないかと思います。

中川 今までたくさんの本を著していらした星川さんですから、本の読者の方々も関心を持ち、理解してくれるのではないでしょうか。SAS真氣光の会の会員にも星川さんのファンの方がいて、グリーンピース・ジャパンのメンバーになりたいと言っていました。

■違法伐採、遺伝子組み替え、共謀法…問題は山積

中川 グリーンピースの活動は反核、環境保護など多岐にわたっているようですが、日本支部が今取り組んでいる活動はどういうことですか。

星川 一つは森林保護ですね。パプアニューギニアの原生林には食料をはじめ、生活に必要なものすべてを森に依存して生活している先住民族の人々が暮らしています。ここに他国の企業が入り込んで違法伐採し、木材も利益も全部持っていってしまうのです。
 グリーンピースは、この問題の解決に向けて長年お手伝いをしてきました。彼らの土地を守るために、きちんと測量して境界線画定作業をしています。インターネットでグリーンピース・ジャパンにアクセスし、「パラダイスフォレスト」キャンペーンのサイトから1回クリックすると、境界線の木に印をつける30センチほどのリボンが現地に贈られるというシステムを作りましたので、どうぞアクセスしてみてください。
 現在、ニューギニア島で行われる違法伐採の消費先第1位は中国で、次が日本なのです。買う国がある限り違法伐採は止まりません。ですから日本の港の水際でチェックし、横断幕を広げて写真を撮ったりして、そういう木材の輸入規制を訴えています。伐採企業が行うような原生林の大規模皆伐ではなく、生態系が保全される持続可能な森林管理「エコフォレストリー」を地元の人々と共にすすめ、その収益を地元の人々に還元し、自立した生活が出来るように普及活動もしています。
 この机についているマークは、森林管理協議会のFSC認証です。生態系に配慮した森からの製品だというマークですね。環境、社会、経済面に配慮し、適切に管理された森林からの製品であるということで、日本でも22箇所の森が認定を受けています。

FSC認証中川 そうですか、このマークは初めて見ましたが、そういう意味があるのですね。他にも、エネルギーとか地球温暖化なども問題ですね。

星川 はい、それから遺伝子組み替えですね。ある作物に種の壁を超えて特殊な性質を持った遺伝子を無理に組み込んでしまうと、どんな影響があるか分かりません。これは生態系を破壊する恐れがあります。遺伝子汚染ですね。日本では、「この製品は遺伝子組み替え作物を使っていません」と表示されていても、5%までは混入が認められているのです。ヨーロッパは0.9%です。動物の飼料は全くのノーチェックですから、食物連鎖によって人間に及ぼす影響は大きいのです。

中川 情報と知識を持ち、選択できることが大切ですね。ところで昨日、知人がグリーンピース・ジャパンからの「共謀罪」に関するお知らせメールを転送してくれましたが、このことも大きな問題ですね。

星川 二人以上の人間が何かを計画したり話し合ったりしただけで罰せられる、「共謀罪」という法律が今の国会で成立してしまうかもしれません。あの悪名高い「治安維持法」だって、法成立当時は国民がよくその意味を認識していなかったのに、10年ほど経ってから濫用されはじめ、戦前・戦中の物言えぬ怖い世の中になりました。
 今度はその「治安維持法」よりももっと悪質で、何か結果的に法に触れるような行為で誰かが捕まると、次々と遡って話し合ったことも目配せをしたことすら罪になるというのですから。平穏な時代ならまだいいのですが、一旦世情が硬直化すれば恐ろしいことになりますよ。
 この共謀罪と呼ばれている関連法案は、正式には「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法の一部を改正する法律案」というのですが、2003年に初めて国会に提出されたものの、あまりにも危険な内容に一般市民、国会議員、法律家団体などの反対が強く、これまでに二度廃案になっています。
 この法律が出来ると、例えば官庁や企業にメールで意見送付を呼びかけるような、NGOが通常行っている活動までも犯罪とみなすことが出来るのです。ですから、グリーンピース・ジャパンなんて、すぐ槍玉に挙げられてしまうでしょう。つねづね、そういうことを仕事にしているのですからね(苦笑)。今もグリーンピース・ジャパンのサイト上で、「このボタンをクリックして意見を書き込むと、衆参の法務委員、首相、法相にメッセージが送れます。法案審議を担当する国会議員やマスコミに反対の声を届けてください」、と呼びかけています。
YES to PEACE NO to ROKKASHO
C Greenpeace/ J.Sutton-Hibbert
被爆60年の広島原爆忌の日、ハトの形をした風船を空に掲げて原爆犠牲者を追悼し、核兵器廃絶を訴えた
 麻薬とテロ組織の監視というスタートでも、後から振り返って、あぁ、あのときが大きな曲がり角だったと後悔することになるのではないか、その曲がり角の今、私たちははっきりと反対の声を上げなければと思うのですよ。たとえ法律が成立してしまったとしても、ああそうですかと事務所をたたむわけにはいきませんから、グリーンピース・ジャパンもその中で出来ることやっていきます。政権交代させて悪法を廃止する道もありますしね。

中川 先代は「氣は心。皆、仲良く相和して感謝して生活をしよう」と言っていましたが、いろいろな問題も究極的にはそこに行き着くように思います。

星川 そうですね。中国は政治的に厳しい環境にありますが、グリーンピースの事務所が香港と北京にあって、正規職員が13人の日本事務所よりずっと多い80人のスタッフがいます。漢字で書くと「緑色和平」です。またグリーンピース地中海は、トルコやレバノンやイスラエルなどのスタッフが一緒になって活動しています。政府同士は仲良くできなくても、市民レベルでは共通の目標をもって力を合わせられるわけです。これは、素晴らしいことではないでしょうか。

中川 インド、アメリカ、屋久島といろいろな生活を体験し、著作活動を通じて世界平和と環境問題にずっと関わっていらした星川さんの、グリーンピース・ジャパン事務局長としての今後のご活躍をお祈りします。今日は、ご多忙の中、お時間を作っていただき、有り難うございました。
(2006月5月16日東京・西新宿「グリーンピース・ジャパン事務局」にて構成◎須田玲子)

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