今月の対談「いい人いい話いい氣づき」

2015年12月:「山本 博文」さん

山本 博文

山本 博文(やまもとひろふみ)さん

1957年岡山県生まれ。東京大学史料編纂所教授。日本近世史を専門として、武家社会や武士道精神など、江戸時代に関する研究で知られる。NHK総合テレビ「タイムスクープハンター」シリーズの時代考証など、多くのメディアで活躍。92年、「江戸お留守居役の日記」で第40回日本エッセイイスト・クラブ賞受賞。著書「武士はなぜ腹を切るのか」(幻冬舎)「武士道の名著 日本人の精神史」(中公新書)ほか多数。

『武士の生き方、死に方。先人の思いを感じながら歴史を学ぶ』

江戸時代は切腹が 一番多かった。腹を切って責任を取るのが武士の生き方

中 川:
私は、中学や高校のとき、あまり歴史は好きではありませんでした。でも、氣の世界とかかわるようになって、昔の人たちの思いが、今の人たちに大きな影響を与えているのではと思うようになり、歴史に興味を持ち始めました。
ですから、歴史の専門家である山本先生にお会いできるのは、とても楽しみにしていました。学校で習う歴史は、何年にどんなことがあったというような話ばかりで、あれだと、本当の歴史の面白さというのはわからないと思うのですが。
山 本:
年号と事項を覚えていって、それを順番に並べるというのは、つまらないですよね。歴史の中で起こったさまざまな出来事を、ひとつのドラマとか物語としてとらえていけば、もっとみなさん、歴史に興味をもってくれると思うのですが。細かく専門的に研究していくとなると、事件の関係性や展開を見たり、情報の流れを知るために、いつその事件が起こったかということがわからないといけませんから、年号も重要になってきます。でも、最初に年号から入ると嫌になる人も多いでしょうね。
中 川:
歴史を楽しく学べるようにということで、先生が監修されているまんがが出ていますよね。あれはいいなと思います。
山 本:

ビリギャルって、話題になっていますよね。「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」という長いタイトルの本が評判になって、映画にもなりました。この本に、勉強ができない子は、まんがで勉強すればできるようになると書いてある影響で、学習まんがが爆発的に売れています。カドカワから出た学習シリーズ『日本の歴史』の監修を頼まれて、担当することになったということなんですよ。
中 川:
そうでしたか。テレビにも出演されたり、大活躍の先生ですが、今、日本人がどこか自信をなくしてしまったり、日本という国の先行きがとても不透明だったりする中で、歴史を学んでいくということは大切だなと思います。
山 本:
その通りですね。日本人と中国人、あるいは韓国人、アメリカ人とは、価値観や考え方が違うわけですね。なぜ、違うのか。長い歴史の中で形成されてきたものがあるからですね。どうして日本人はこういう考え方をするようになったか。それは、歴史を紐解かないとわからないですよ。
中 川:
私は、先生の書かれた「武士はなぜ腹を切るのか 日本人は江戸から日本人になった」という本を興味深く読ませていただきました。
日本人には、腹を切る文化があった。つまり、死んで責任を取るということですよね。切腹というのは、日本独自のもので、武士として生きる上では、常に腹を切る覚悟をして生きてきたわけです。とても強烈な生き方で、今の日本人にも影響を与えているのではと、思えてならないんですね。
先生のご専門は江戸時代ということですが、江戸時代にも切腹はあったんですね。
山 本:
江戸時代が、一番、腹を切った時代ですね。それ以前の中世は、戦いに負けたときに、最後に腹を切るというものでした。江戸時代になって、戦いがなくなって、制度が確立して、武士はいろいろな役割を担うことになります。役人としての仕事が多くなり、役割がうまくいかなかったときには、腹を切らないといけないこともありました。今なら辞職して責任を取るわけですが、当時の武士は腹を切ることで責任を取りました。
中 川:
そうでしたか。戦いで負けたり、犯罪を犯したときだけ腹を切るのかと思っていました。当時の武士は、命がけで仕事をしていたわけですね。失敗が許されないということですね。
山 本:

そうでしたか。戦いで負けたり、犯罪を犯したときだけ腹を切るのかと思っていました。当時の武士は、命がけで仕事をしていたわけですね。失敗が許されないということですね。けないということです。しかし、その弊害として、失敗を次に生かすということができないんですね。それは、近代になっても続いていて、旧日本軍でも、戦いに敗れると、そのまま指揮官がピストル自殺をしてしまいます。そうやって責任を取ります。それは潔いことではありますが、失敗から学ぶことはたくさんあるはずです。なぜ失敗したかを究明して次に生かすのが大切なのに、死んでしまったら、それができないですね。
日本人には、今でも、そういう傾向はありますね。

<後略>

(2015年10月21日 東京都文京区の東京大学史料編纂所にて 構成/小原田泰久)

著書の紹介

著書の紹介

「武士はなぜ腹を切るのか 日本人は江戸から日本人になった」 山本博文 著 (幻冬舎)

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